中央へ「新規事業」と書き、周囲に「顧客」「技術」「営業」と置いたところで手が止まります。マンダラチャートで難しいのは、81マスの数ではありません。中心テーマをどこまで狭め、周囲8マスを同じ階層でそろえるかです。
すべて埋めても、顧客名、機能、評価語、販売方法が混在していれば企画には使えません。反対に、空欄が残っていても、事実・仮説・案が分かれ、次に誰へ何を聞くかが決まれば前へ進めます。
この記事では、新規事業で使うマンダラチャートに絞り、9×9テンプレートの構造と書く順序、設備点検の記入例、書き終えたマスを次の確認へつなげる方法を解説します。
マンダラチャートとは|81マスを3層で使う
マンダラチャートとは、中央テーマから主要な視点と具体項目を広げる9×9の発想整理シートです。中心テーマは1マス、その周囲に主要な視点を8つ置き、外周に具体項目の記入枠を最大64個つくります。
主要な視点は、中央部分と対応する外周ブロックの中央へ同じ言葉で写します。重複を除けば、記入内容は「中心テーマ」「8つの視点」「具体項目」の3層です。
新規事業では、中央に対象者と場面が読める問いを置きます。周囲には顧客、現在の対処、支払者などの視点、外周には観察事項、未確認仮説、解決案の候補を書きます。マンダラチャートだけで需要、実現可能性、採算性が確認できるわけではありません。役割は、検証すべき論点を広げるところまでです。
マンダラチャートの9×9テンプレート|中央から外周へ展開する
次のテンプレートでは、AからHを8つの視点として置きます。A1からH8は、それぞれの視点を具体化するマスです。
A1 | A2 | A3 | B1 | B2 | B3 | C1 | C2 | C3 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A4 | A | A5 | B4 | B | B5 | C4 | C | C5 |
A6 | A7 | A8 | B6 | B7 | B8 | C6 | C7 | C8 |
D1 | D2 | D3 | A | B | C | E1 | E2 | E3 |
D4 | D | D5 | D | 中心テーマ | E | E4 | E | E5 |
D6 | D7 | D8 | F | G | H | E6 | E7 | E8 |
F1 | F2 | F3 | G1 | G2 | G3 | H1 | H2 | H3 |
F4 | F | F5 | G4 | G | G5 | H4 | H | H5 |
F6 | F7 | F8 | G6 | G7 | G8 | H6 | H7 | H8 |
真ん中の「中心テーマ」から始め、周囲のA〜Hを決めます。その後、A〜Hを対応する外周ブロックの中央へ写し、A1〜A8にはAを具体化した内容だけを書きます。
紙で使うなら、中央部分と外周ブロックを別紙に分けても構いません。色だけに頼らず、各マスの先頭に「事実」「仮説」「案」と文字で付けると、あとで検証へ渡しやすくなります。
マンダラチャートの書き方|6段階で中心から広げる
外周から思いつくまま埋めると、情報の階層が混ざります。中心の問い、主要な視点、具体項目の順に進めます。
- 中心テーマを一文で置く。 「新規事業を成功させる」ではなく、「製造現場の設備点検で、引き継ぎ時の再確認を減らす事業機会は何か」と書きます。
- 主要な視点の候補を出す。 顧客、場面、現在の対処、支払者、成立条件など、テーマを見る角度を並べます。
- 主要な視点を同じ階層へそろえる。 「顧客」「スマートフォン」「高付加価値」「月額課金」のような対象・手段・評価・収益形態の混在を直します。
- 主要な視点を外周へ転記する。 中央部分と外周ブロックで同じ表記を使います。
- 各視点を具体化する。 1マスには1要素だけを書き、観察したい場面や現在の行動まで下ろします。
- 事実・仮説・案を分ける。 顧客から聞いた事実、まだ確かめていない推測、解決案にラベルを付けます。
8つの視点の役割が分かれるまでは、外周へ進みません。中央の3×3を見直し、似た視点をまとめ、確認が必要な角度を残してから具体化します。
マンダラチャートの新規事業例|設備点検の2ブロックを展開する
中心テーマを「製造現場の設備点検で、引き継ぎ時の再確認を減らす事業機会は何か」とします(架空例)。
中央の周囲には、次の8視点を置きます。
- A:対象者
- B:発生場面
- C:現在の対処
- D:生じている不都合
- E:支払者
- F:自社が使える資産
- G:提供方法
- H:成立を左右する条件
ここでは「発生場面」と「現在の対処」の2ブロックだけを広げます。発生場面には「日常点検」「異常の発見時」「勤務交代時」「部品交換前」「再稼働前」「新人教育時」「監査準備時」「複数拠点の比較時」を置けます。どれも、これから調べる候補です。
現在の対処には「紙の点検票」「表計算ファイル」「口頭の引き継ぎ」「写真の保管」「現場の再確認」「熟練者への電話」「定時巡回」「取扱説明書の確認」を置きます。実際の方法は、対象企業へ聞くまで分かりません。
2つを組み合わせると、「勤務交代時に点検写真と異常箇所が渡り切らず、現場の再確認が起きているのではないか」という仮説ができます。ここで機能案は決めません。担当者と班長に直近の引き継ぎを振り返ってもらい、何を、どの媒体で、どの順序で渡したかを確認します。
マンダラチャートの8つの切り口を決める問い
周囲には、答えではなく、中心テーマを見る角度を置きます。企業向け新規事業なら、次の8問を作業用の出発点にできます。
- 誰の場面か。 利用者、支払者、導入を決める人、運用する人は誰か。
- いつ起きるか。 平常時、例外時、引き継ぎ時など、行動が発生する瞬間はいつか。
- 今はどう対処しているか。 既存商品、手作業、先送り、我慢のどれか。
- 何が不都合か。 時間、判断、品質、連携のどこで手戻りが起きるか。
- 誰が対価を判断するか。 利用者と予算を持つ主体が違うなら、どこで合意が要るか。
- 自社は何を持っているか。 顧客接点、技術、データ、販売経路のうち、実際に使えるものは何か。
- どう届けるか。 商品、業務支援、仲介、教育のどれが仮説に合うか。
- 何が成立を左右するか。 規制、情報管理、現場運用、既存契約など、先に確かめる条件は何か。
「顧客」と「利用者」の内容がほぼ同じなら、片方を「支払者」や「発生場面」へ替えます。埋まらない箇所は、社外の人へ聞く論点として残します。
チームと生成AIでマンダラチャートを使う
チームで使うなら、各自が中央の3×3を作ってから持ち寄ります。共通する視点、特定の人だけが挙げた視点、誰も置かなかった視点の3つを確認してください。
似た言葉をすぐ統合しないことも大切です。「利用者」と「導入決裁者」、「作業時間」と「判断待ち」は、役割が違う場合があります。何を指して書いたかを説明し、同じ意味だと確認できたものだけを束ねます。
生成AIを使う場合は、出力をすべて「AI案」と表示し、事実と混ぜません。顧客行動、制度、競合機能は一次情報と照合し、機密情報や個人情報を入力できるかは、利用条件と社内規程で確認します。
マンダラチャートが埋まらない6つの原因と次の進め方
空欄が出たら発想力不足と決めつけず、中心テーマの広さ、視点の重複、事実と案の混在を見直します。
起きていること | 見直す箇所 | 直し方 |
|---|---|---|
中央の周囲8マスで止まる | 中心テーマの範囲 | 対象者と発生場面を足し、問いを狭める |
似た言葉ばかり並ぶ | 主要な視点の重複 | 利用者、支払者、場面、対処へ替える |
外周が機能名だけになる | 顧客側の情報不足 | 現在の行動、代替手段、困る瞬間に立ち戻る |
会議中に案が消える | 発散と評価の混在 | 反対理由を別欄へ置き、評価を後へ分ける |
未確認事項が断定文になる | 事実と仮説の混同 | 「仮説」ラベルと確認相手を添える |
81マスを埋めるため水増しする | 完成条件の誤り | 空欄を調査で補う論点として残す |
書き終えたマスを顧客仮説へ変える
書き終えた後は、「対象者+場面+現在の行動+不都合+次に確かめること」の1文へ変換します。企画への影響が大きく、外れた場合に方向転換が必要な仮説から調べます。
同じ記入欄に「確認担当者」「確認期限」「判断責任者」「判断日」「確認結果」「次の選択」を加えてください。次の選択は、継続、修正、追加確認、保留、中止から、自社の意思決定に合うものを決めます。
似た案を束ねる工程と、案を採点する工程は別です。マンダラチャートが担当するのは、論点と仮説候補を広げ、次の確認へ引き渡すところまでです。
まとめ|マンダラチャートはマスの数より次の問いを残す
マンダラチャートの完成条件は、81マスを埋めた状態ではありません。中心テーマを8つの視点から見直し、具体項目を必要な範囲まで広げ、次に誰が何を確かめるかが決まった状態です。
中心の問いを置き、8つの視点を同じ階層でそろえ、外周へ転記します。各ブロックを具体化したら、事実・仮説・案を分けます。最後に複数のマスを組み合わせ、外れたら外れたと分かる顧客仮説へ変えてください。
空欄は失敗ではありません。調査で埋めるべき論点として残せば、81マスの水増しより価値があります。
