ブレインライティングとは|6-3-5法のやり方と実践手順

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の鳥居 誉定が書きました。

ブレインライティングを使うと、会議で最初に発言した人だけが話題の向きを決める状況を避けやすくなります。問いが出た直後、全員が黙って書きます。話す順番を待たず、考えかけの案も紙に残せるからです。

口頭のブレストでは、一人が話している間に別の人の案が消えたり、先に出た案への賛否で時間を使ったりします。発言を促すだけでは消えない偏りです。入力の仕組みそのものを変える必要があります。

ブレインライティングとは、参加者が発言する前に案を書き、互いの記述を受け取って発想を広げる方法です。 この記事では、代表形式である6-3-5法の進め方、準備、向く場面、空欄や重複への対処、終了後に検証へ渡す手順まで解説します。

ブレインライティングとは|口頭ブレストとの違い

ブレインライティングは、発言の速さや順番に頼らず、参加者全員が同時に案を記録する発散手法です。書いた案を受け渡す、各自で書いた後に集約する、共有ボードへ同時入力する、といった形式があります。6-3-5法はその一つです。

口頭のブレインストーミングでは、ほかの人が話している間、自分の案を覚えたまま順番を待ちます。DiehlとStroebe(1987年)が扱ったのが、この待ち時間に当たる「プロダクション・ブロッキング」です。

ブレインライティングなら全員が同時に書けるため、この待ち時間は手順のうえで減らせます。ただし、この研究は6-3-5法の優位性を直接検証したものではありません。書く形式に変えるだけで、必ず良い案が増えるという意味でもありません。

比較する点

口頭のブレインストーミング

6-3-5法

個人作業後の集約

入力

一人ずつ発言する

全員が同時に書く

各自が別々に書く

他者の案との接続

その場で口頭反応する

回ってきた用紙を読んで展開する

集約後に初めて読む

記録

進行役の記録に依存しやすい

記入用紙がそのまま残る

個人の記録が残る

向く状況

即興の対話を重ねたい

発言待ちを避け、案を受け渡したい

日程を合わせず案を集めたい

どの形式でも、発散中の評価は止めます。ブレインライティングが変えるのは入力方法であり、案の正しさを判定する工程ではありません。

ブレインライティング6-3-5法のやり方|6ラウンドで回す

6-3-5法の基本形は、6人が一巡につき3案を5分で書き、用紙を回す方法です。これを6ラウンド続けます。3案×6人×6ラウンドで、すべての欄が埋まった場合の記入枠は108です。

ただし、108は独自案や採用案の数ではありません。空欄、重複、前案の発展も含む延べ記入枠です。記入時間は合計30分ですが、問いの説明、配布、意味の確認、整理、選定には別の時間がかかります。

基本の進め方は次の6段階です。

  1. 進行役が、全員で考える問いと発散中のルールを一文ずつ示す
  2. 参加者へ、3列×6行の記入用紙を一枚ずつ配る
  3. 最初の5分で、各自が一行に3案を書く
  4. 合図が出たら、全員が同じ方向へ用紙を回す
  5. 受け取った用紙を読み、次の行へ案を書く
  6. 用紙が一巡したら回収し、記述の意味を確認する

記入例|前の案から変えた点を残す

説明用の架空例です。問いを「設備停止時、現場担当者が復旧判断に必要な情報を集める手間をどう減らすか」と置き、最初の案を次の参加者が展開します。

1ラウンド目の案

2ラウンド目の発展案

変えた点

端末に手順書とエラー履歴を集約する

端末を持たない協力会社向けに、設備の二次元コードから同じ情報を開く

利用者と閲覧手段

停止箇所と過去対応を通知する

停止後ではなく、前兆を検知した時点で確認項目を通知する

利用時点

設備別の連絡先を表示する

連絡先一覧ではなく、必要な担当者を含む相談画面を自動で開く

次の行動

発展案では、前案を言い換えるだけで終わらせません。「対象者を変えた」「利用時点をずらした」「次の行動を変えた」など、差分を短く残します。

コピーして使える3列×6行の用紙

表の上に問い、対象者、利用場面、確定済みの制約を書きます。一つのセルには一つの案だけを入れてください。

案1

案2

案3

1巡目:____

1巡目:____

1巡目:____

2巡目:____

2巡目:____

2巡目:____

3巡目:____

3巡目:____

3巡目:____

4巡目:____

4巡目:____

4巡目:____

5巡目:____

5巡目:____

5巡目:____

6巡目:____

6巡目:____

6巡目:____

ブレインライティングで準備するもの|問い・用紙・進行ルール

6-3-5法の準備では、同じ対象と場面を想定できる問い、案を受け渡せる用紙、ラウンドを区切るタイマー、評価を後へ送るルールをそろえます。会議開始後にこの4点を詰めると、最初の5分は説明だけです。

問いは対象者・場面・変えたい行動まで書く

「新規事業のアイデアを考える」では広すぎます。「設備停止時、現場担当者が復旧判断に必要な情報を集める手間をどう減らすか」なら、対象者、場面、変えたい行動が明確です。

変えられない条件がある場合は、確定事項と仮置きの前提を分けて添えます。参加者が違う場面を想像したまま書き始めるのを防ぐためです。

用紙と進行ルールは開始前に固定する

用紙には問いと3列×6行の枠を置き、受け渡す方向を決めます。進行役が伝えるのは、開始、残り時間、受け渡しの合図です。

途中の称賛、否定、質問は回収後へ送ります。肯定的な反応でも、次に書く人の判断基準になり、案が寄ってしまうからです。

ブレインライティングが機能する場面・向かない場面

ブレインライティングは、発言待ちや発言量の偏りが生じやすい発散の場に向きます。たとえば6人の会議で、最初の発言へ後続案が寄りやすい、役職者の発言後に別案が出にくい、他者の記述から発想を展開したい、といった場面です。

一方、候補の選定、法規制・技術・契約条件の正誤、部門間の利害調整、最終決裁には向きません。発散と評価では、必要な参加者も判断基準も別のものです。

書く形式へ変えただけで匿名になるわけでもありません。筆跡やアカウント名が残れば、誰の案か分かります。役職差や心理的な不安は、用紙だけでは消えない点に注意してください。

ブレインライティングの空欄・重複・早すぎる評価への対処

空欄や似た案が続くとき、参加者の発想力だけを原因にしてはいけません。問いの粒度、記入単位、発散と評価の分離を点検してください。枠を埋めること自体は目標ではありません。

起きていること

点検する箇所

直し方

最初から手が止まる

対象者と場面が曖昧

誰が、いつ困り、今どう対処しているかを問いへ足す

似た案が続く

前案との差分がない

対象者、時点、手段、次の行動のどれを変えたか書く

前の案を読めない

社内略語や主語抜けがある

誰が、いつ、何を変える案かに書き直す

否定や採点が始まる

発散と評価が同じ画面にある

評価欄を隠し、回収後に別の時間を取る

たとえば2ラウンド続けて空欄が増えたら、時間を延ばす前に問いを読み返します。「何を変える案か」が見えないなら、対象者か場面を一段具体化してください。

オンライン・少人数でブレインライティングを行う方法

オンラインでは、全員が同時入力できる場所を分け、移動順を固定します。上書き防止、編集者名の表示、履歴、接続が切れた場合の扱いも開始前に確認します。一枚の共有ボードへ自由に書くだけでは、誰がどの案を受け取るかが曖昧です。

6人がそろわない場合は、参加人数に合わせて用紙数とラウンド数を変えます。人数、案数、時間を変えた運用は「6-3-5法のアレンジ」と表記し、最大記入枠を計算し直してください。基本形の108枠を成果の説明へ流用してはいけません。

ブレインライティング後に案を整理して検証へ渡す

ブレインライティングの終了条件は、108枠を埋めることではありません。記録を整理し、次に確かめる候補、未確認の前提、担当者を決めることです。

  1. 完全に同じ記述だけをまとめ、意味が近い案は違いを残して隣に置く
  2. 各案を「確認済みの事実」と「推測」に分ける
  3. 次に聞く相手と、最初に確かめる問いを一つずつ置く
  4. 確認日、担当者、記録場所を決める

「入力を自動化する」と「入力自体を不要にする」は、似ていても前提となる業務が違います。分類名を急いで付けず、差を残したまま検証へ渡してください。

ブレインライティングのよくある質問

6人そろわない場合も6-3-5法と呼べますか

少人数でもブレインライティングは実施できます。ただし、基本形は6人・3案・5分です。条件を変えた運用はアレンジと表記し、基本形の最大記入枠をそのまま成果の説明には使いません。

30分で108個のアイデアが出ますか

108は、すべての記入欄が埋まった場合の延べ枠数です。空欄、重複、既出案の発展を含むため、独自案や採用案が同じ数だけ出るという意味ではありません。30分は記入時間の合計で、説明、整理、評価の時間は別に必要です。

オンラインでも実施できますか

同時入力ができ、記入先と移動順を固定できる環境なら実施できます。開始前に短い操作確認を行い、編集権限や接続の調整でラウンドを止めないようにします。

まとめ|ブレインライティングを発散で終わらせない

ブレインライティングは、会話より先に全員が書き、記述を受け渡しながら案を広げる発散手法です。6-3-5法の基本形では、6人が一巡につき3案を5分で書き、6ラウンド続けます。全枠が埋まった場合の上限は108です。

実行前に決めるのは、対象者と場面が読める問い、3列×6行の用紙、受け渡しの方向、評価を後へ送るルールです。終了後は重複だけをまとめ、事実と推測を分け、次に確認する相手と担当者を置きます。

6-3-5法は、Bernd Rohrbachが1969年に発表した形式です(1968年に開発されたとする文献もあります)。


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