共創の現在地をデータで見る|Spready匿名化集計レポート

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の花田 海が書きました。

「他社は、1つの仮説を確かめるために社外の人と何回会っているのか」。新規事業の稟議でそう聞かれても、企業単位のオープンイノベーション実施率では答えられません。担当者が知りたいのは、取り組みの有無ではなく、実際に生まれた接点の数だからです。

Spreadyのプラットフォームデータには、依頼企業がどのような社外実務者と、何を確かめるために面談したかが記録されています。このレポートでは、企業や個人を特定できない形に集計し、面談、依頼テーマ、業界、職種の分布を読みます。

ただし、数字を見る前に「1件」の定義が必要です。候補者を紹介した回数なのか、実際に対話した回数なのかで、同じサービスでも件数は変わります。ここでは集計対象、除外基準、匿名化の考え方、引用時の注意まで先に示します。

Spreadyのプラットフォームデータで数える「共創」の定義

このレポートで数える共創は、社外の実務者が企業の事業課題について知見を提供するため、担当者と実際に対話した接点です。候補者の提示、日程調整、面談予定の登録だけでは1件に数えません。

資本提携、共同出資、共同研究、アクセラレータープログラムの採択も対象外です。出資1件と面談1件を同じ列に足しても、活動の規模も期間も違うため、何を示す数字か分からなくなります。そこで、最小の共通単位である「成立した面談」に絞ります。

集計で使う4つの言葉は、次の意味です。

  • 依頼企業:会いたい相手の条件と、確かめたいテーマを提示した企業
  • 社外実務者:条件に合い、面談へ参加した個人
  • 面談:依頼企業の担当者と社外実務者が実際に対話した1回
  • テーマ:依頼企業が面談で確かめたいこと

社内資料で件数を比べるときも、この単位をそろえてください。自社では候補者の紹介数、レポートでは実施面談数を使えば、分母の違う数字を横に置くことになります。

Spreadyのプラットフォームデータの集計方法と匿名化

母集団は、Spready上で実施が記録された面談です。同じ依頼企業が複数のテーマで面談した場合、企業数は1社、テーマ数は複数、面談数は実施回数として数えます。

次の記録は集計から外します。

  1. Spready自身が依頼した面談
  2. 日程は決まったものの、実施されなかった面談
  3. テストや社内検証のために作成した記録

自社案件を含めれば利用企業の活動量に見えない面談が混ざり、未実施の予定を含めれば「会った回数」が膨らみます。除外基準は、数字を小さくするためではなく、同じ定義で比較できる状態を保つために置きます。

匿名化では、業界と職種を掛け合わせた結果が少数になる場合、上位の分類へまとめるか「その他」に含めます。企業規模や地域などの属性を重ね、個社や個人を推測できる細かさでは公開しません。

対象期間、母数、少数区分をまとめる基準値は、現時点では掲載していません。

Spreadyのプラットフォームデータで接点の規模を読む

規模を示す中心指標は、実施した面談の件数です。候補者の提示数は運用方針を変えるだけで増減し、案件数は1案件あたりの面談回数を隠します。実際に対話した回数なら、担当者が自社の活動量と同じ単位で比べられます。

面談件数と併せて見るのは、依頼テーマ数、1テーマあたりの面談数、依頼から初回面談までの日数です。たとえば面談が増えていても、初回までの日数が長くなっていれば、担当者は仮説検証の予定を前倒しで組まなければなりません。

1テーマあたりの回数や初回までの日数は、平均値だけでなく中央値で読みます。一部の大量面談や長期停滞に平均が引かれると、多くの担当者が経験した値から離れるためです。

Spreadyの面談データから分かる接点の中身

面談の依頼文は自由記述です。そのままでは集計できないため、確かめたい内容を次の5類型に分けます。

  1. 現場実態の把握:想定した業務や購買の流れが、現場でどう動いているか
  2. 課題の存在確認:想定した課題が、当事者にとって実際の困りごとか
  3. 代替手段の把握:同じ問題を、現在どの方法で処理しているか
  4. 受容性の確認:提示した解決案を、日常業務へ組み込めるか
  5. 業界構造・商習慣の理解:取引慣行、意思決定者、予算の出どころはどこか

たとえば「新サービスについて意見を聞きたい」という依頼は、課題の存在確認と受容性の確認が混ざります。分類基準がなければ、判定する人によって集計先が変わります。自由文を人が分類する以上、割合だけでなく分類のルールも一緒に見る必要があります。

面談件数は活動量です。課題が見つかったか、仮説を棄却できたか、事業化へ進んだかまでは示しません。100回会った案件と5回で意思決定した案件を、回数だけで優劣を決めないことが前提です。

Spreadyのプラットフォームデータに見る業界・職種分布

依頼企業の業界と、面談した社外実務者の職種は別の軸です。製造業の依頼企業が、小売の店舗運営経験者へ話を聞くこともあります。2つを混ぜず、依頼側と面談相手を分けて集計します。

業界分布が示すのは、Spreadyを利用した企業の構成です。「その業界で共創が盛ん」という市場全体の傾向ではありません。利用企業の業界に偏りがあれば、面談の分布にも同じ偏りが出ます。

職種では、依頼時に指定した職種と、実際に面談が成立した職種のずれも見ます。特定の職種を10件探して2件しか面談できなかったなら、その職種はプラットフォーム上で見つけにくい可能性があります。ただし、依頼条件の狭さも影響するため、一致率だけで人材の多寡を断定できません。

業界と企業規模、地域などを細かく掛け合わせると、該当企業を推測できる場合があります。読み手に細かな分布が便利でも、匿名性を損なう組み合わせは出しません。

公的統計とSpreadyのプラットフォームデータの違い

公的統計とSpreadyのプラットフォームデータは、代わり合うものではありません。公的な調査は企業を単位に取り組みの有無や体制を捉え、このレポートは接点を単位に実際の面談回数を捉えます。

NEDOとJOICによる『オープンイノベーション白書 第三版』は、日本企業のオープンイノベーションを広く整理しています。総務省と経済産業省による経済センサスは、事業所・企業の活動を大きな母集団で捉える統計です。いずれも、一つの仮説について誰に何回会ったかを測る資料ではありません。

反対に、Spreadyのデータは利用企業と登録者に限られます。日本企業全体の代表値ではない一方、面談単位の細かな動きを見られます。市場全体の状況には公的統計、具体的な接点の動きにはプラットフォームデータという使い分けが必要です。

Spreadyのプラットフォームデータを読むときの限界

最も大きな限界は、母集団の偏りです。Spreadyを利用する企業と、面談に応じる社外実務者の組み合わせから得た数字なので、日本企業全体へ広げて解釈できません。

誤読しやすいのは、次の3点です。

  1. 面談件数の増減を、市場全体の共創の増減とみなす
  2. 利用企業の業界分布を、業界別の共創活発度とみなす
  3. 面談件数を、事業の進捗や成果とみなす

面談が前期より増えても、利用企業数の増加や運用変更の影響が混ざります。金融業の比率が高くても、金融業界全体で共創が最も盛んとは限りません。面談100件でも判断材料が得られないことがあれば、5件で仮説を棄却できることもあります。

テーマ分類を人が行う点、少数区分をまとめている点も限界です。数値を引用するときは、「Spready上の面談」「利用企業の分布」と、対象範囲を文中に残してください。

引用・二次利用時に確認すること

数値を引用する際は、レポート名、対象期間、面談の定義、母数を併記します。「Spready調べ」とだけ書くと、どの期間の何を数えた数字か、あとから検証できません。

他社データと合算したり、独自に比率を計算したりした場合は、その加工方法を明記します。Spreadyの公表値と、引用者が計算した値を同じものとして見せないためです。

利用条件は、引用する時点の公開ページで確認してください。少なくとも、日本企業全体の代表値として示さないこと、企業や個人を推測する目的で区分を組み合わせないことが必要です。

よくある質問

元データの個票は開示されますか

このレポートが扱うのは、企業や個人を特定できない単位にまとめた集計値です。個別の依頼や面談内容を知るための資料ではありません。集計の確からしさは、対象期間、除外基準、分類方法を確認して判断します。

前期からの増減を、市場全体の共創の増減として使えますか

使えません。面談件数には、利用企業数、サービスの運用、依頼内容の変化が混ざります。「Spready上で実施された面談の増減」と範囲を限定して記載してください。

自社の業界だけを細かく見られますか

公開される区分の範囲で確認します。業界を細分化し、職種や企業規模まで重ねると、個社を推測できる場合があるからです。対象件数が少ない区分は、上位分類または「その他」にまとめます。

まとめ

Spreadyの匿名化集計レポートが数えるのは、候補者の提示でも提携件数でもなく、依頼企業と社外実務者が実際に対話した面談です。件数を使う前に、対象期間、除外基準、匿名化、テーマ分類を確認してください。

見るべき指標は、面談件数だけではありません。依頼テーマ数、1テーマあたりの面談数、初回面談までの日数、業界と職種の分布を組み合わせると、接点がどこで生まれ、どこでつくりにくいかを読めます。

ただし、このデータはSpreadyの利用企業と登録者に限られ、日本企業全体を代表しません。引用するときは「Spready上で実施された面談」と範囲を一文に残すこと。それが、数字を実態以上に大きく見せないための条件です。

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