インタビュー調査とは|種類・他の調査手法との違い・選び方

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の鳥居 誉定が書きました。

「顧客に話を聞こう」と決まった瞬間から、手が質問リストづくりに伸びていないでしょうか。インタビュー調査で最初に決めるのは、質問文ではありません。調べたいのが導入見送りの経緯なのか、作業が止まる場面なのか、課題の発生割合なのか。それによって、集めるべき証拠そのものが変わるからです。会話で答えに近づける問いもあれば、観察や定量アンケートに任せたほうがよい問いもあります。

混乱のもとがもう一つあります。構造化・半構造化・非構造化という「聞き方」の区分と、デプスインタビュー・グループインタビューという「参加形式」が、同じ「種類」の棚に並べられがちな点です。両者はどちらか一方を選ぶものではありません。「半構造化×1対1×顧客」のように組み合わせて使います。

この記事で扱うのは、インタビュー調査の定義、種類を整理する三つの分類軸、他の調査手法との違い、そして必要な証拠から形式を選ぶところまでです。

インタビュー調査とは|本人報告から経験と判断の経緯を調べる

インタビュー調査とは、調査者が対象者へ問いかけ、本人が説明する出来事・行動・認識・判断理由を記録し、比較する調査手法です。 ここで押さえたいのは、発言はあくまで「本人報告」だという点です。調査者が直接観察した事実や、利用ログで確認した行動とは、証拠としての性質が違います。

強みは、選択肢を用意する前の段階で、出来事の順序や対象者自身の言葉をたどれることにあります。たとえば「申請作業が大変」という一言が出たとします。いつ始まり、どこで止まり、誰に確認し、何で代替したのでしょうか。そこまで聞けば、一つの不満を複数の仮説に分けられます。ただし、語られた内容がそのまま実際の行動や市場全体の傾向を表すわけではありません。

「何件聞けば足りるのか」という定番の疑問には、参照できる研究があります。ある研究は、同質的な対象者への定性インタビュー60件を分析し、主要テーマは12件目までにほぼ現れたと報告しました(出典:Guest ほか 2006年)。ただし、異なる対象者や調査課題に共通する固定件数を示した研究ではありません。だからこそ、対象者の条件と比較の軸を先に定める必要があります。

定性調査としてのインタビューとは、事業判断のために発言とその文脈を読み、未知の論点や判断理由を見つける使い方を指します。

会話・営業ヒアリングとの境界

ただ話しただけでは、インタビュー調査になりません。インタビュー調査と呼べるのは、調査後に下す判断、調査課題、対象者条件、記録方法、比較方法を先に決め、反対事例も含めて記録を比べる活動です。

営業ヒアリングとの違いは、目的にあります。営業ヒアリングは、個別の商談を進めるために導入条件や懸念を聞く活動です。一方のインタビュー調査は、特定の提案を受け入れてもらうことではなく、調査課題に答える証拠を残すことを目的とします。同じ担当者が両方を受け持つなら、調査の場では提案や反論を挟まず、商談記録と調査記録を分けて管理します。

インタビュー調査の種類|三つの分類軸を組み合わせる

インタビュー調査の種類は、質問の固定度、参加形態、対象者と調べる焦点という三つの軸を別々に選ぶと整理できます。 「デプスだから非構造化」「顧客インタビューだから1対1」と決めつける必要はありません。調査課題に合わせて、軸ごとに選んで組み合わせます。

構造化・半構造化・非構造化

MertonとKendallが1946年に示した焦点化面接は、面接前に焦点を置き、対象者の経験に応じて問いを深める設計です。この知見を参照しつつ、質問の固定度を次の三形式に整理します。

形式

事前に固定するもの

聞き手の裁量

向く調査課題

構造化インタビュー

質問文、順番(必要に応じて回答形式)

小さい

同じ条件で回答を比較したい

半構造化インタビュー

論点と主要質問

順番変更と深掘りができる

比較しながら経緯や理由も追いたい

非構造化インタビュー

大きなテーマ

大きい

未知の論点を広く探索したい

構造化インタビューは回答をそろえやすい反面、用意していない論点を追いにくくなります。非構造化インタビューは対象者の語りを広く追える一方、対象者間で何を比べるかが曖昧になりがちです。半構造化インタビューは、比較する論点を残しつつ質問順や深掘りを変えられる、中間の形式です。

1対1とグループ

個人の経緯を追うなら1対1、参加者同士の反応まで記録するならグループです。1対1は、個人の意思決定や失敗、社内調整など、他者の前では話しにくい経緯を時系列で追う形式です。デプスインタビューは1対1で深く聞く形式ですが、質問の固定度とは別の軸に属します。

グループインタビューと呼ぶのは、複数の参加者へ順番に質問するだけでなく、他者の発言への賛同、反論、言い換えも記録対象にする形式です。個人の意思決定を時系列で追う問いとは分けて考えます。

誰の、どの経験を聞くか

ユーザー、顧客、有識者という名称は、質問形式ではなく「対象者と焦点」の違いです。利用中の経験を調べるならユーザー、購買・導入・継続の判断を調べるなら顧客、業界構造や専門実務を調べるなら有識者が候補になります。肩書だけで選ばず、調べたい出来事を経験しているか、判断に関与したか、具体を説明できるかで条件を書きます。

たとえば「半構造化×1対1×導入見送りを経験した決裁関与者」と定めれば、質問の自由度、参加形態、必要な経験が一度にそろいます。対面かオンラインかは、現場や実物を見る必要、情報管理、移動負担といった実施条件として、この組み合わせの後に決めれば十分です。

インタビュー調査と他手法の違い・選び方|必要な証拠で分ける

調査手法は、実施しやすさではなく、意思決定に必要な証拠の種類で選びます。 インタビュー調査が主に扱うのは、本人が説明した経験と判断です。観察、定量アンケート、ユーザビリティテスト、ログ分析は、それぞれ別の証拠を集めます。

Nielsen Norman GroupのJakob Nielsenは、2001年の論考で、利用者の自己申告と実際の行動を分けて扱う必要を示しました。次の表は、この区別を手がかりに、事業判断で使う証拠の違いを整理したものです。

調査手法

主に得られる証拠

答えやすい問い

単独では答えにくい問い

インタビュー調査

経験・行動・判断についての本人報告

なぜ選んだか、どんな経緯だったか

実際の発生割合、観察された行動

行動観察

現場で起きた操作、停止、道具、周囲とのやり取り

実際に何をどう行ったか

本人がどう解釈したか、どの程度広く起きるか

定量アンケート

選択肢ごとの回答分布、属性別の差

どの回答が何件・何%あるか

選択肢にない経緯や言葉

ユーザビリティテスト

指定課題での操作、迷い、完了の可否

試作品や画面を使えるか、どこで止まるか

課題が生じた業務全体の背景

ログ・既存資料の分析

記録された利用、処理、発生時刻、文書

何がいつ起きたか

記録されていない理由や認識

行動観察では、対象者の作業に立ち会い、実際の手順や回避行動を記録します。本人が「問題なく進めている」と話していても、観察してみると複数画面への転記や非公式な確認が見つかる場合があります。語られた理由と観察された行動が食い違っても、どちらかを誤りと決めつけません。次に確かめる仮説として残します。

インタビュー調査が向く問い・向かない問い

出来事の経緯、選択・継続・中止の理由、関与者の判断、対象者自身の言葉を知りたいなら、インタビュー調査が候補になります。逆に、発生率や市場規模には定量アンケートや既存データ、実際の操作には行動観察、試作品の利用可否にはユーザビリティテストを選びます。施策と結果の因果を確かめるには、比較条件を置いた別の検証が必要です。

迷ったときは、「導入を見送った人が、社内審査のどの場面で何を懸念したかを知りたい」のように、誰の、どの出来事について、何を明らかにするかを一文で書いてみてください。答えが本人の説明の中にあるならインタビュー、実際の行為にあるなら観察やログ、分布にあるなら定量アンケートです。

インタビュー調査の選び方|必要な証拠から形式を決める4工程

インタビュー形式は、質問項目からではなく、調査後に選ぶ意思決定と、その判断に必要な証拠から決めます。 対象者、質問の固定度、参加形態を同じ調査課題へつなぎ、インタビューで得られない証拠は別の手法へ渡します。

次の4工程は、新規事業でインタビュー形式を選ぶための手順です。

  1. 意思決定と調査課題を書く

対象顧客を絞る、課題仮説を修正するなど、調査後に選ぶ選択肢を定めます。判断者または会議体と判断期限を決め、「誰の、どの出来事について、何を明らかにするか」まで一文にします。

  1. 必要な証拠を決める

本人の説明、観察された行動、回答分布、利用記録のどれが判断に要るかを分けます。採用する証拠と未確認事項を別欄に書き分け、インタビューだけでは答えられない部分に他手法を割り当てます。

  1. 三つの分類軸から形式を選ぶ

質問の固定度、参加形態、対象者と焦点を組み合わせます。「半構造化×1対1×直近に導入を見送った決裁関与者」のように書けば、必要な経験と聞き方を同時に確認できます。あわせて、Fitzpatrickの『The Mom Test』(2013年)を参照し、製品案への賛否ではなく、過去の具体的な出来事と行動を聞ける形式になっているかも点検します。

  1. 実施・分析計画へ引き渡す

形式が決まったら、対象者条件、募集方法、同意・記録範囲、実施担当、分析方法を次の工程で具体化します。引き渡すのは、調査後の選択肢、判断者と期限、判断に使う証拠、未確認事項、次の検証の責任者と期限です。

インタビュー調査の手法選びで起きる失敗

手法選びで避けたいのは、名称だけで形式を決める、分類軸を一対一で結ぶ、インタビューだけで全ての証拠を得ようとする、この三つの状態です。 調査課題と必要な証拠へ立ち戻れば、形式の選び直しも、他手法の追加も判断できます。

起きる失敗

残る問題

直し方

「デプス」などの名称から選ぶ

必要な証拠と形式が対応しない

調査課題を書き、三つの分類軸を別々に選ぶ

デプスは非構造化、顧客は1対1と固定する

使える組み合わせを先に除外する

「半構造化×グループ×利用者」のように併記する

発言から行動・分布・因果まで決める

本人報告の範囲を超えて結論づける

観察、定量アンケート、ログ、比較検証を加える

対象者の発言は、記憶し、言語化し、その場で報告した内容です。観察やログと食い違っても、無理に一つの説明へまとめないでください。条件の差か未確認事項として、次の検証へ渡します。

まとめ|必要な証拠からインタビュー形式を選ぶ

インタビュー調査は、対象者が説明する経験と判断の経緯を集める手法であり、必要な証拠が本人報告にあるときに選びます。 質問の固定度、参加形態、対象者と焦点を別々に決め、観察・定量アンケート・ユーザビリティテスト・ログ分析と役割を分けます。

冒頭で見た研究が示したのは、同質的な対象者を調べた条件下での結果です。固定件数へ置き換えず、調査課題、必要な証拠、三つの分類軸の順に決めます。インタビューで答えられない行動・分布・因果は、別の手法へ渡してください。


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