インタビュー同意書の作り方|録音・引用・個人情報の許諾

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の鳥居 誉定が書きました。

取材の前日に「実名は出せません」と連絡が来ます。公開直前になって、社内共有だけのはずだった録音が文字起こしサービスへ渡っていたと分かることもあります。こうした行き違いは、「話を聞く承諾」と「記録を利用する同意」を一括りにしたときに起きます。

インタビュー同意書とは、聞き手と対象者が、取材目的と発言・記録の利用条件を事前に確認する文書です。録音、外部公開、実名表示、写真掲載などを分け、選択された条件を公開、保管、削除まで引き継ぎます。

この記事では、顧客インタビュー、有識者ヒアリング、事例取材を想定し、インタビュー同意書の項目、選択式のひな形、同意後の運用を解説します。医療・健康情報、未成年者、海外居住者などを含む場合は、実施前に弁護士と個人情報保護の担当部門へ確認してください。

インタビュー同意書とは|依頼承諾との違い

日程調整メールへ「参加します」と返信があっても、録音や記事掲載まで了承したかは分かりません。依頼承諾は参加できるかを確かめるものですが、インタビュー同意書は取得する情報、記録方法、利用目的、公開範囲、保管方法まで扱います。

依頼時にはテーマ、所要時間、謝礼などを示します。同意書では、発言、音声、映像、写真、プロフィール情報を、誰が、どこで、どのように使うかを具体化してください。

公開記事にしない顧客インタビューでも、録音、社外サービスでの文字起こし、生成AIへの入力、別案件での再利用があれば、説明する項目は増えます。一方、録音せず、個人を識別できないメモだけを限定メンバーで使うなら、短い説明と確認記録が適する場合もあります。

目的は、対象者が情報の扱いを理解して選び、実施側が選択内容を守れる状態をつくることです。同意書は、秘密保持契約や発注契約の代わりにはなりません。未公開情報、報酬、成果物、権利帰属まで扱うなら、文書間の条件をそろえます。

インタビュー同意書を書く前に決める利用範囲

「当社の事業に利用します」だけでは、対象者も制作担当も利用の可否を判断できません。インタビュー同意書を書く前に、目的、取得物、閲覧者、掲載先、保管期間を決めます。

決める事項

記入例

確認する問い

実施目的

新サービスの課題仮説を検証する

広報・広告への利用を含むか

取得・記録

氏名、発言、音声、写真、担当者メモ

録音を拒否しても参加できるか

利用者

事業担当、調査委託先、記事制作担当

社外の委託先やAIサービスを含むか

利用先

社内検討資料、調査報告書、オウンドメディア

SNS、広告、営業資料への転載を含むか

表示方法

実名、匿名、属性のみ

対象者が選択できるか

保管・相談

保管場所、削除時期、連絡先

公開後の訂正相談を誰が受けるか

「将来の事業開発に利用する」「関連媒体へ掲載する」といった表現では、どこまで使われるのかを読み取れません。予定している媒体と用途を列挙し、未定の二次利用は実施するときに改めて確認します。

インタビュー同意書に入れる許諾項目

録音への同意はあっても、外部記事への掲載条件が書かれていない同意書では、制作工程へ入った段階で確認をやり直すことになります。実施主体、目的、日時、方法に加え、実際の処理に合わせて次の8項目を置いてください。

  1. 参加と回答の任意性:答えたくない質問を断れること、途中で終了を申し出られること
  2. 取得する情報:氏名、所属、役職、連絡先、発言、音声、映像、写真、アンケート回答など
  3. 利用目的:課題検証、社内報告、記事制作、広告制作など、目的を分けて記載すること
  4. 記録方法:録音、録画、文字起こし、メモ作成の有無と使用するサービス
  5. 表示と公開範囲:実名、匿名、属性のみの別、掲載媒体、公開予定、転載予定
  6. 編集と確認:誤記修正、読みやすさのための編集、要約、見出し化、公開前確認の対象と期限
  7. 共有・保管・削除:委託先、アクセス権、保存期間、削除方法
  8. 問い合わせと変更手続き:連絡先、訂正・掲載停止の相談方法、対応範囲

「いつでも撤回できます」とだけ書くと、公開済みの記事や配布済みの印刷物をどこまで戻せるかが曖昧です。受付期限、公開後に対応できる範囲、保存が必要な記録の扱いを、実際の運用に合わせて書きます。

インタビュー同意書では録音・引用・写真の同意を分ける

録音は構わないが顔写真は出したくない、と考える対象者を、「すべてに同意する」か「参加しない」かの2択に追い込んではいけません。録音、発言の外部公開、実名表示、写真掲載は別々に確認する運用が適しています。

対象者が利用範囲を選び、制作担当が条件を照合しやすくするための分け方です。たとえば、次のように分けます。

  • 音声を録音し、正確な記録と文字起こしに使う
  • 映像を録画し、社内で内容を確認する
  • 発言を要約・抜粋し、社内資料または外部記事へ掲載する
  • 氏名、所属、役職を掲載する
  • 顔写真または映像の静止画を掲載する

発言を記事に使うときは、言い回しを整える程度の修正と、論旨を組み替える編集を分けて考えます。複数の発言をつなぐ、回答を別の文脈へ移すといった場合は、誤解を避けるため再確認するのが安全です。公開前確認の対象、返信期限、未返信時の扱いも決めてください。

著作権法第2条第1項第1号は、著作物の定義を定めています。個々の発言が著作物に当たるか、どの利用に許諾が必要かは案件ごとの判断です。広い権利放棄を一律に求めず、利用する発言、媒体、編集範囲を具体化し、必要に応じて弁護士へ確認します。

インタビュー同意書で個人情報を扱うときの確認点

記事で名前を伏せても、録音や申込情報を組み合わせれば本人が分かることがあります。インタビュー同意書では、公開時の表示と、元データの管理を分けて考えてください。

個人情報保護法第2条第1項は、生存する個人に関する情報のうち、氏名などにより特定の個人を識別できるものや、ほかの情報と容易に照合して識別できるものなどを「個人情報」と定義しています。同法は、利用目的の特定、目的外利用の制限、取得時の利用目的の通知または公表、安全管理措置についても定めています。

自社のインタビューへどの条文や例外が適用されるか、どの文面で説明するかは個別判断です。最新法令、公的ガイドライン、自社規程を照合し、法務・個人情報保護の担当部門または弁護士へ確認してください。

文字起こし・生成AIへ入力する前に確認する

録音を文字起こしサービスや生成AIへ送る場合は、契約、アクセス制御、再委託、学習利用、削除方法を確認します。「社内で分析する」という説明だけでは、どのサービスへ入力してよいかまでは決まりません。

各工程へデータを渡す前に、同意した目的と利用者の範囲へ収まるかを確かめます。個人データの取扱いを委託する場合は、個人情報保護法が定める委託先の監督についても、自社の担当部門へ確認してください。

病歴、信条、犯罪被害などを含む情報は、「要配慮個人情報」に該当する可能性があります。質問する必要性、同意の取り方、閲覧者、保管、削除を、弁護士と個人情報保護の担当部門へ相談します。

インタビュー同意書のテンプレート

以下のテンプレートは、案件名だけを差し替える完成品ではありません。実際に取得する情報と利用先に合わせて選択肢を削り、実際には行わない処理を書かず、対象者が判断できる具体性まで調整します。

角括弧内を編集し、自社規程との整合と弁護士の確認を経て使用してください。

インタビュー参加・記録利用同意書

1. 実施主体・問い合わせ先 実施主体:[会社名・部署名] 担当者:[氏名] 連絡先:[メールアドレス/電話番号]

2. インタビューの概要 名称:[調査・取材名] 目的:[検証・調査・記事制作などの具体的な目的] 日時・方法・予定時間:[記入] 参加は任意です。答えたくない質問への回答を断り、途中で終了を申し出ることができます。

3. 取得する情報 [氏名/所属/役職/連絡先/発言/音声/映像/写真/その他]

4. 記録と利用への同意 □ 音声の録音と文字起こしに同意する □ 映像の録画と社内確認に同意する □ 発言の要約・抜粋を社内資料へ掲載することに同意する □ 発言の要約・抜粋を外部公開記事へ掲載することに同意する □ 氏名・所属・役職の掲載に同意する □ 顔写真・映像の静止画の掲載に同意する

5. 表示・公開条件 表示方法:[実名/匿名/属性のみ] 掲載予定媒体:[オウンドメディア、調査報告書など] 編集範囲:[誤記修正、要約、抜粋、見出し化など] 公開前確認:[対象範囲、送付日、返信期限、修正回数]

6. 取扱いと保管 閲覧者・委託先:[記入] 保管場所・アクセス権:[記入] 保管期間・削除方法:[記入] 記載のない目的や外部公開に利用する場合は、必要に応じて改めて確認します。

7. 変更・撤回などの相談 訂正、掲載停止、そのほかの相談は上記窓口で受け付けます。 受付期限と公開後に対応できる範囲:[記入]

私は上記の説明を読み、選択した項目に同意します。 日付:[記入] 対象者氏名:[記入] 署名または同意操作:[記入]

電子フォームでは、文面の版、対象者、選択項目、同意日時を保存します。同意書を更新したら版番号を変え、新しい条件を旧版の対象者へそのまま適用することはしません。電子的な同意が個別案件で有効か、署名などの方式が必要かは弁護士へ確認してください。

インタビュー同意書を公開・削除まで運用する

署名済みのPDFを保管するだけでは、公開条件を守れません。対象者ごとの選択内容を、録音、文字起こし、原稿、画像、公開先、削除記録へ引き継ぎ、制作担当が照合できる状態にします。

確認時点

申請者・主な確認者

残す記録

企画確定

申請:事業担当/確認:事業責任者、法務・個人情報保護担当

目的、対象者条件、取得情報、利用先

対象者への接触前

申請:調査担当/確認:法務、広報

依頼文、同意文面の版、説明資料

録音・外部サービス利用前

申請:実施担当/確認:情報セキュリティ、委託先管理、法務

利用サービス、委託先、保存先、削除条件、審査結果

外部公開前

申請:制作担当/確認:事業責任者、法務、広報

許諾条件との照合、対象者確認、公開先、承認記録

二次利用前

申請:利用部門/確認:法務、事業責任者、広報

当初目的との差分、追加許諾、追加媒体

保管期限の到来時

申請:データ管理者/確認:事業責任者、情報セキュリティ

元データ、複製、委託先データの削除記録

対象者ごとに、同意文面の版、選択した許諾、利用媒体、委託先・利用サービス、保管期限、承認者、公開先、訂正・停止履歴を残します。制作担当へは、「録音可」「外部記事への引用可」「実名不可」「顔写真不可」のように、一つずつ確認できる形で渡してください。

公開前には、原稿と画像を許諾条件へ照合します。広告や採用資料などへ利用先を増やすときは、当初の説明と選択内容に含まれるかを確認し、含まれない場合は追加の許諾を検討します。

訂正・掲載停止の相談が来たら、受付日時、対象箇所、要望、判断者、結果を残します。法的判断が必要な場合は、その時点で弁護士へ確認してください。

まとめ|インタビュー同意書を利用条件の記録として残す

インタビュー同意書の品質は、文章の長さでは決まりません。対象者が利用範囲を選べ、実施側がその選択を公開、保管、削除まで守れるかが重要です。

作成前に、目的、取得物、閲覧者、公開先、保管期間を決めます。同意書には、任意参加、取得情報、記録方法、利用目的、表示方法、編集範囲、公開前確認、委託先、保管・削除、問い合わせを具体的に書いてください。

署名後は、対象者ごとの条件を制作担当へ引き継ぎます。利用先の追加や条件変更があれば、改めて確認します。テンプレートをそのまま使わず、最新法令、公的ガイドライン、自社規程を照合し、公開前に弁護士の確認を受けてください。

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