ブルーオーシャン戦略とは|見つけ方とERRCグリッドの使い方

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の鳥居 誉定が書きました。

「競合がいない市場を探そう」と会議を始めたら、案が宇宙旅行や空飛ぶ車まで広がりました。別の会議では、既存商品へ機能を一つ足し、「競合にないからブルーオーシャンだ」と結論づけました。どちらも、ブルーオーシャン戦略の使い方から外れています。

ブルーオーシャン戦略とは、未参入の業界を当てる発想法ではありません。顧客が選ぶ価値要因を組み替え、買い手の価値を高めながら提供コストを下げ、新しい需要をつくる考え方です。

この記事では、戦略キャンバス、6つのパス、3段階の非顧客、ERRCグリッドを一続きの手順で使い、BtoB新規事業の構想を検証できる仮説へ変えるところまで進めます。

ブルーオーシャン戦略とは|価値革新から考える

ブルーオーシャン戦略の中心は、差別化か低コストかを二者択一にせず、買い手の価値と提供側の費用構造を同時に組み替える「価値革新」です。単に競合のいない場所へ移る話でも、技術的に新しい製品を作る話でもありません。

W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の公式解説では、企業が競い合う既存の市場空間をレッドオーシャン、競争の前提を組み替えて生まれる未開拓の市場空間をブルーオーシャンと表します。

違いは競合企業の数ではありません。顧客が比較する要因と、各社が投資する水準が似ていればレッドオーシャン型です。比較要因そのものを組み替えたとき、ブルーオーシャンの仮説が生まれます。

その違いを一枚で見る道具が戦略キャンバスです。横軸に業界の競争要因、縦軸に各社がその要因へ投じる水準を置き、線で結んだものを価値曲線と呼びます。各社の線が似ているなら、同じ基準で競っている状態です。自社だけ一項目を高くしても、改善の範囲を出ません。

顧客が使わない高度機能を削り、個別対応を標準化します。代わりに、導入初日の分かりやすさや既存業務からの移行支援を高めます。価値曲線の形が変わり、その差を顧客の選択理由と費用構造で説明できれば、新しい需要の仮説になります。

ブルーオーシャン戦略の見つけ方|現在の競争条件を描く

ブルーオーシャン戦略では、戦略キャンバスで現在の競争要因を描き、市場の境界を6つの方向から見直します。その後、3段階の非顧客が買わない理由を調べ、得た事実をERRCグリッドへ移します。

戦略キャンバスを顧客事実から作る

顧客が比較する要因、業界が宣伝する要因、提供原価を押し上げる要因を、提案書、失注理由、問い合わせ、利用記録から集めます。水準は高・中・低でも構いません。ただし、顧客の発言、選択行動、提供条件のどれを根拠にしたかを残してください。

自社の印象だけで線を引けば、戦略キャンバスではなく自己採点表になります。「使いやすさ」「信頼性」のような抽象語は、導入に要した日数、審査で止まった項目、解約時に挙がった理由へ開きます。

6つのパスで市場の境界を引き直す

Six Paths Frameworkの公式解説は、市場の境界を、代替産業、業界内の戦略グループ、買い手、補完財・補完サービス、機能志向と感性志向、時間軸の6方向から見直す枠組みです。BtoBでは、各パスを調査質問へ変えます。

6つのパス

BtoBで確認する問い

見る資料・行動

代替産業

同じ目的のために、顧客は別業界の何を選んでいるか

比較候補、外注、内製、表計算、何もしない選択

戦略グループ

高価格・高機能と低価格・簡易の間で乗り換える理由は何か

失注理由、プラン変更、更新・解約の記録

買い手

利用者、選定者、決裁者、購買部門の誰が採用を止めるか

選定会議の参加者、承認条件、導入後の問い合わせ

補完財・補完サービス

購入前後のどの作業で止まるか

審査、取引先登録、データ移行、利用者教育

機能志向・感性志向

安心や説明のしやすさが選択を左右していないか

稟議の表現、導入責任者の懸念、社内質問

時間軸

顧客行動を変え始め、後戻りしにくい変化は何か

業務手順の変更履歴、予算配分、利用推移

6マスを推測で埋める必要はありません。証拠がなければ「未確認」と書き、次のインタビューや資料確認へ回します。設備保全のサービスなら、競合システムだけでなく、紙の点検表、表計算ソフト、外注、故障後の都度対応も代替行動です。

ブルーオーシャン戦略では3段階の非顧客を見る

「3段階の非顧客」は、既存市場との距離で非顧客を分ける枠組みです。Three Tiers of Noncustomersの公式解説では、第1層を必要最低限だけ利用し、よりよい選択肢があれば離れる人、第2層を検討したうえで意識的に選ばなかった人、第3層を商品カテゴリー自体を選択肢にしていない人と整理しています。

非顧客の段階

BtoBで探す対象

確認する質問

第1層

最小契約だけ使う企業、更新を迷う企業、定着していない部署

直近で利用をやめようとしたのはいつか。代わりに何を使ったか

第2層

比較後に失注した企業、審査や予算申請で止まった企業

どの条件で候補から外れ、現在はどう処理しているか

第3層

類似課題を別部門や別手段で処理する企業

その問題を誰の仕事として扱い、どの費目と手順で解いているか

非顧客へ理想の機能を尋ねても、需要の証拠にはなりません。最後に問題が起きた日時、実際に取った行動、途中で諦めた理由、現在の代替手段を聞きます。そこで見つけた選択理由と離脱理由を、ERRCグリッドへ渡してください。

ブルーオーシャン戦略のERRCグリッドを書く

ERRCグリッドとは、既存業界の競争要因を「取り除く」「減らす」「高める」「付け加える」の4つへ振り分け、価値曲線を変える道具です。4象限を埋めることより、顧客価値と提供コストのつながりを説明できることが欠かせません。

ERRCは、Eliminate、Reduce、Raise、Createの頭文字です。4つの問いの公式解説とERRCグリッドの公式解説では、業界が当然視した要因を取り除く、標準を下回るまで減らす、標準を上回るまで高める、業界が提供してこなかった要因を付け加える、と整理しています。

最初から「付け加える」へ向かうと、機能追加の会議へ戻ります。取り除く・減らすを先に検討し、浮いた費用や運用負荷を、高める・付け加えるへ振り向けます。

観点

問うこと

判断に使う事実

書き直したい答え

取り除く

顧客の選択理由にならない競争要因は何か

未使用機能、利用されない付帯サービス、維持費

「無駄をなくす」

減らす

必要水準を超えて提供している要因は何か

利用頻度、過剰品質による費用、運用工数

「品質を下げる」

高める

業界が十分に解けていない顧客負担は何か

導入時間、習熟、承認、移行で止まった事実

「満足度を上げる」

付け加える

非顧客が選べるようになる新しい価値要因は何か

不採用理由、代替行動、満たされていない利用場面

「AI機能を付ける」

「取り除く」は要因自体を価値曲線から消すこと、「減らす」は必要な水準まで下げることです。「高める」は既存の競争要因を業界水準より上げること、「付け加える」は、これまで比較軸になかった要因を作ることです。似た言葉ですが、費用と検証方法が変わります。

各マスには名詞だけでなく、現在の水準、変更後の水準、根拠となる顧客事実を書きます。「サポートを高める」では足りません。「顧客が行う初回設定を、契約前の移行確認と利用初日のデータ登録へ変える」まで書けば、必要な作業と費用が見えます。

ブルーオーシャン戦略をBtoB新規事業で使う例

BtoBでERRCグリッドを使うときは、商品機能だけでなく、導入審査、データ移行、利用者教育、契約単位も競争要因に含めます。以下は設備保全の情報共有サービスを想定した仮想例です。

複数工場を持つ製造業で、故障対応の記録が紙、表計算ソフト、担当者の記憶へ分かれています。既存システムは多機能ですが、初期設定と入力項目が多く、小規模拠点では導入が止まります。ここまでを仮説とします。

  • 取り除く:標準プランから在庫管理、購買管理、会計連携を外し、故障記録の共有へ用途を絞る
  • 減らす:設備ごとの必須入力項目と権限階層を減らし、全社統一マスターの完成を導入条件にしない
  • 高める:現場写真から過去の類似記録へ到達する速さ、スマートフォン入力、拠点横断の検索性を上げる
  • 付け加える:既存の紙帳票を最初の検索データへ移すサービスと、導入責任者が社内説明に使う運用範囲表を用意する

顧客価値は機能数ではありません。故障記録の散在に困る小規模拠点が、短い準備で使い始められることです。ただし、紙帳票の読み取りを人手で続ければ採算を圧迫します。対象帳票、移行作業の標準化、追加料金の境目も同時に検証します。

ブルーオーシャン戦略が機能しない5つの使い方

ブルーオーシャン戦略が機能しない案は、「競合がいない」「新しい技術を使う」「価格を下げる」のどれか一つを価値革新と取り違えています。

  • 競合不在を需要の証拠にする:競合がいないのは、顧客が対価を払わない領域だからという場合があります。現在の代替行動と、そこへ使う時間・費用を確認します
  • 付け加えるだけで終える:AI、ダッシュボード、個別支援を増やせば、提供費用と操作負荷も増えます。取り除く・減らすが空欄なら機能追加案です
  • 顧客の要望をそのまま採用する:要望より、購入を見送った場面、予算申請で止まった箇所、現在の代替手段を見ます
  • 戦略キャンバスを自社採点で作る:顧客行動と実際の提供条件へ結び、根拠のない要因は未確認とします
  • 見つけた市場が続くと考える:競合はまねし、顧客の期待も変わります。利用継続、解約理由、提供費用を見て競争要因を更新します

ブルーオーシャン戦略を顧客検証と事業モデルへつなぐ

ERRCグリッドを作った後は、価値曲線を変える仮説を顧客行動と採算の両面で検証します。戦略キャンバスは構想を示しますが、販売経路や収益条件まで自動では決まりません。

各項目を「仮説」「根拠」「未確認事項」「確認方法」に分けます。「必須入力項目を減らす」は仮説、「初期設定で離脱した」は根拠、「どの項目を削れるか」は未確認事項、「実際の故障記録を使う入力テスト」が確認方法です。

顧客価値は、説明への賛同ではなく、実データの持ち込み、審査担当者の紹介、次回検証の日程、利用継続などの行動で見ます。提供コスト側では、初期設定、顧客別改修、問い合わせ、データ移行、営業期間を記録してください。

検証で残った仮説は、リーンキャンバスなどへ移します。顧客区分、課題、価値提案、販売経路、収益、費用をつなぐと、ERRCの判断が事業全体にどう効くかが見えてきます。

まとめ|ブルーオーシャン戦略は競争要因を組み替える

ブルーオーシャン戦略とは、業界が当然としてきた競争要因を組み替え、買い手の価値を高めながら提供コストを下げ、新しい需要をつくる考え方です。競合不在の市場を当てる手法ではありません。

実務では、戦略キャンバスで現在の競争要因を描き、6つのパスで市場の境界を見直します。続いて、非顧客が買わない理由を調べ、ERRCグリッドへ事実を移してください。

グリッドが完成しても、戦略が確定したわけではありません。顧客が価値を選ぶか、提供費用が下がるかを別々に確かめ、結果を価値曲線と事業モデルへ戻します。この往復で、見栄えのよい発想が検証できる事業仮説へ変わります。

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