新規事業支援のRFPの書き方|必須11項目と提案評価の設計

この記事は、ネクストイノベーションベース編集部の花田 海が書きました。

3社に声をかけたのに、返ってきた提案が比べられない。A社は市場調査の見積、B社はワークショップの実施計画、C社は常駐コンサルの体制図。金額も期間も揃わず、稟議に載せる比較表が作れない——新規事業支援の発注で最初につまずくのが、このRFP(提案依頼書)の書き方です。

原因は支援会社側にはありません。こちらが「新規事業の立ち上げを支援してほしい」としか伝えていないからです。相手は依頼を自社の得意な型に翻訳して提案します。翻訳の方向がばらけたぶんだけ、提案もばらけるのです。

とはいえ、何を作るかが決まっていないから外部に頼むのに、何を作るかを書けと言われても矛盾します。この矛盾をどう処理するかが、新規事業支援のRFPの中心にあります。この記事では、その矛盾を抱えたままでも提案を比べられるRFPの書き方を、必須11項目と評価の設計から整理します。

新規事業支援のRFPとは|IT調達のRFPと違う点

新規事業支援のRFP(提案依頼書)とは、下したい意思決定と答えを出したい問いを発注側が言語化し、複数の支援会社に同一条件で提案を求める文書です。 指定するのは、作るものではなく判断したいこと。システム開発のRFPとの最大の違いがここにあり、書き方の作法もここから分岐します。

先に用語を整理しておきましょう。RFI(情報提供依頼書)は、発注先を絞り込む前に、支援会社の実績・体制・サービス範囲といった情報の提供を求める文書です。RFP(提案依頼書)は、その先で具体的な支援内容・期間・金額の提案を求めます。RFQ(見積依頼書)が求めるのは、支援内容が確定した後の金額だけ。新規事業の発注では、RFIを飛ばしてRFPから入るケースが多く見られます。支援会社の数がIT業界ほど多くなく、候補が最初から数社に絞られているからです。

IT調達のRFPは、要件を詳細に書くほど提案の精度が上がります。ところが新規事業支援では逆が起きます。支援内容を細かく指定するほど提案は指定どおりの作業計画になり、支援会社が持っている「その進め方は筋が悪い」という判断が提案から消えてしまうのです。発注側が正しく問題設定できている保証はどこにもありません。むしろ、問題設定に自信が持てないから外部に相談する場合が多いはずです。

そのため、RFPには、やってほしい作業ではなく、置かれている状況と下したい判断を書きます。作業の設計そのものを提案の対象にするわけです。この構造にしておくと、提案書を読んだ時点で相手の思考の質が見えます。同じ状況説明から、A社は顧客インタビュー20件を提案し、B社は既存顧客への追加販売テストを提案してきます。どちらが自社の状況に合っているかを議論できます。これが提案を比較するということです。

成果物の性質も違います。動くソフトウェアではなく、意思決定に使える判断材料が納品物になります。報告書の枚数やインタビューの実施件数は、それ自体では価値を持ちません。何が分かって、次に何を決められるようになったか。この形で成果物を定義しないと、検収の段階でお互いに困ることになります。

RFPを書くべき案件・書かなくていい案件

RFPを書く手間が見合うのは、複数社を比較する必然性がある案件と、社内の稟議で発注理由を説明する必要がある案件です。どちらにも当てはまらないなら、RFPを作らずに直接相談したほうが早く進みます。

書いたほうがいい典型は次のとおりです。

  • 発注金額が社内の相見積規定に該当する
  • 過去に同種の発注実績がなく、購買部門や法務が説明を求めてくる
  • 事業部内で「どこに頼むか」の意見が割れていて、判断の根拠を残す必要がある
  • 支援会社を変える予定があり、前回の失敗を条件として明文化しておきたい

逆に、RFPが不要なケースもあります。小規模なスポット相談、単発の短期調査、すでに取引実績があって支援範囲が固まっている継続案件。こうした案件でRFPを回すと、調達期間が支援期間を上回ってしまいます。新規事業では速度が価値を持つ場面が多いので、この逆転は避けたいところです。

迷ったら、比較対象が実在するかを確認してください。複数社に声をかける予定があるならRFPを書きます。候補が1社しかないなら、11項目のうち「現在地」「判断したい論点」「予算枠」の3つを1枚にまとめて渡すだけでいいのです。それでも提案の質は上がります。

RFPは調達の文書であって、稟議の文書ではありません。この2つを1つの資料で兼ねようとすると、どちらの目的にも届かない中途半端な文書ができあがります。

RFPに書く11項目|構成と記入例

11項目を並べると、提案を比較するのに必要な情報が揃います。RFPの書き方の質は、分厚くすれば上がるものではなく、項目が埋まっているかどうかで決まります。

#

項目

書く内容

抜けたときに起きること

1

背景と目的

なぜこのテーマに取り組むのか、なぜ外部に依頼するのか

提案が一般的な新規事業論になり、自社固有の制約が反映されない

2

対象事業・テーマの範囲

対象領域、対象顧客、対象外とする領域

提案の射程がバラつき、金額の比較ができない

3

現在地

すでに分かっていること、まだ分かっていないこと、実施済みの検証、過去に企画が止まった理由

調査済みの内容が再提案され予算が重複する。過去に止まった場所で同じように止まる

4

判断したい論点

支援期間の終了時に下したい意思決定(続行/撤退/方針転換など)

提案が各社の標準メニューになり、比較の土俵ができない

5

支援範囲と社内に残す範囲

外部に出す工程、社内で担う工程、境界の定義

双方が相手の担当だと考えた工程が空白になる

6

成果物の定義と使途

何を、誰が、どの会議で使うのか

報告書の体裁だけが整い、意思決定に接続しない

7

期間・マイルストーン・中止条件

全体期間、中間ゲートの時期、途中で止める条件

期間満了まで走り切る前提の提案しか集まらない

8

体制と発注側の稼働

自社の担当者、稼働可能時間、決裁ライン

支援会社が発注側の稼働を厚めに見積もって金額が膨らむ。または発注側が動く前提の計画が初月から遅れる

9

予算枠と契約・法務条件

予算レンジ、契約形態の希望、NDA・知財・再委託の扱い

提案金額が桁で外れ、契約交渉で数週間を失う

10

提案書の構成指定

記載してほしい項目、ページ数上限、提出形式

提案書の粒度が揃わず、比較表が作れない

11

選定プロセス

提出期限、質問受付方法、評価基準、選定スケジュール

支援会社側が意思決定の時期を読めず、優先度を下げられる

発注側の筆が止まりやすいのは3・4・6の3つです。そのまま転記できる記入例を置いておきます。

3 現在地:「昨年度に想定顧客12社へヒアリングを実施し、課題の存在は確認済み。ただし予算保有者と決裁経路は未確認。一昨年に類似企画を起案したが、市場規模の根拠が薄いという理由で差し戻されている。」

4 判断したい論点:「支援終了時に、この領域へ本格投資するか撤退するかを役員会で決めたい。判断に必要なのは、想定顧客が現在この課題にいくら支出しているか、既存の代替手段より優位に立てる条件があるか、この2点である。」

5・6 成果物の定義と使途:「検証結果サマリと次フェーズの選択肢3案。11月の経営会議で投資判断の一次資料に使う。インタビューの逐語録は生データで受領し、社内で再分析できる状態にする。」

書き渋られるのは3(現在地)と9(予算枠)です。現在地を正直に書くと社内の未熟さが露呈するように感じ、予算を書くと上限いっぱいで提案されると考えるからでしょう。けれども、どちらも隠すことで失う情報のほうが大きいのです。現在地を伏せれば済んだはずの調査に予算が二重に払われ、予算レンジを伏せれば各社の標準単価で提案が返ってきます。

項目の順番は入れ替えて構いません。ただし1〜4は必ず前半にまとめてください。支援会社は最初の数ページで提案の方向性を決めるため、状況と論点が後ろに置かれていると読まれ方が変わります。

仕様が固まらない案件をどう書くか|「問い」を発注する

仕様が固まらない案件では、作業の仕様の代わりに、答えを出したい問いと、その問いに答えが出た状態の定義を書きます。新規事業支援のRFPの書き方の中核はここです。

書き分けてみましょう。作業を発注する書き方は「対象市場の市場規模調査、競合5社の分析、顧客インタビュー10件を実施してください」。問いを発注する書き方では、判断したい論点を先に置き、最後に「必要な調査手段はそちらの判断で設計してください」と添えます。

後者だと、提案の質のばらつきが見えるようになります。前者はインタビュー10件をいくらでやるかという単価比較に落ち、そもそもインタビュー10件で判断がつくのかという論点が検討されないまま発注が進んでしまうのです。

問いを書くときは3点をセットにします。第一に、答えが出た状態を具体化してください。「顧客ニーズを明らかにする」では基準にならないので、「想定顧客20社のうち、現在この業務に外部支出をしている社数と金額レンジが分かっている状態」まで書きます。第二に、その答えを誰がどの会議で使うのかを書きます。役員会なのか事業部長の判断なのかで、必要な精度が変わります。第三に、答えがネガティブだった場合にどうするかを書いておきます。撤退もありうると明記されたRFPには、事業を続ける前提の提案が集まりにくくなります。

現在地の開示も同じ考え方です。社内で実施した検証、失敗した企画、社内で反対されている論点。ここまで書けるRFPは提案の精度が上がります。過去2年で3回企画が差し戻されている、という事実が書いてあれば、支援会社は最初のマイルストーンを社内合意の形成に置く提案ができます。書かれていなければ通常の検証プロセスを提案され、また同じ場所で止まるでしょう。

予算レンジも同じ理屈で開示します。書かないと支援会社は自社の標準単価で組むしかなく、返ってくる提案の金額は桁の違う水準まで散らばります。そうなると比較そのものが成立しません。上限額を裸で書くのが不安なら、想定レンジを示して「内容により応相談」と添える書式で足ります。

外に出しにくい情報は、NDAを先に締結して開示範囲を広げましょう。RFP配布前にNDAを結ぶ運用は、支援会社側もほぼ受け入れます。開示できない情報がある場合は、その旨と選定後に開示する時期を明記しておくほうが親切です。空白のまま渡すと、支援会社は最悪のケースを想定して見積に上乗せします。

注意したいのは、問いを発注することと、問いの設定ごと外部に委ねることは別の話だという点です。支援会社に丸ごと預けてしまう発注は、たいてい失敗する構造を抱えています。問いを立てるのは発注側の仕事です。

成果物と契約条件はどこまで書くか

RFPに書く契約の記述は、希望する契約形態を1行と、詰めておきたい法務条件の論点を箇条書きにするところまでで足ります。契約書の文言をRFPで作りにいくと、選定前の交渉に時間を吸われてしまいます。

一方、成果物の定義には手間をかける価値があります。形式と中身の両方を書いてください。形式は「報告書一式」ではなく、「中間報告資料(役員会提出用)」「インタビュー逐語録」「検証結果サマリと次フェーズの選択肢3案」のように分解します。中身は、その資料を使って何を決めるのかを添えます。使途が書かれた成果物定義は、検収の基準にそのまま転用できます。

検収の条件を「結果」に紐づけるか「実施と提出」に紐づけるかは、契約類型の選択と一体で決まります。準委任と請負のどちらを基本に置くか、探索フェーズと実装フェーズで契約を分けるか。この判断はRFPの段階で確定させる必要はないので、希望する形態を書いて、詳細は選定後の交渉に送りましょう。

法務条件で書き漏らしやすい論点は3つあります。インタビュー音源や逐語録などの一次データの帰属、支援期間中に生まれたアイデアの知的財産の扱い、そして再委託の可否と範囲です。特に一次データは、支援会社側のフォーマットで蓄積されて手元に残らないケースがあります。RFPの段階で論点として挙げておけば、選定後の交渉が短くなります。

契約条項の最終的な文言は、自社の法務部門または顧問弁護士の確認を前提にしてください。RFPに書くのは希望条件であって、契約書そのものではありません。

提案の評価設計|評価軸と配点をRFPに書いておく

評価軸と配点は、提案を受け取る前にRFP本文へ書きます。後出しの評価基準は社内で「結論ありきの選定だった」と言われやすく、稟議差し戻しの原因になります。受け取ってから軸を決めると、良さそうだと感じた提案に合う軸を無意識に選んでしまうものです。

新規事業支援では、金額の比重を下げる設計が実務的です。支援内容が各社で違う以上、金額の比較は同一条件の比較になっていません。安い提案は支援範囲が狭いか、稼働が少ないかのどちらかであることが多いのです。

評価軸

見る観点

配点例

問題設定の妥当性

こちらの状況説明を自社の型に流し込んでいないか。前提を問い直しているか

30

進め方の具体性

初期の動きが週単位で書かれているか。判断のゲートが置かれているか

25

体制と実稼働

提案書に名前のある人が実際に稼働するか。稼働時間と役割が明記されているか

20

領域・実務の適合

対象領域または類似の事業構造での実務経験があるか

15

費用

支援範囲に対する妥当性。単価ではなく総額と稼働の関係で見る

10

上の配点はあくまで一例で、案件によって変える前提のものです。すでに問題設定が固まっていて実行力だけが欲しい案件なら、進め方の具体性と体制の比重を上げます。テーマ自体が曖昧な段階なら、問題設定の配点を引き上げます。

見落とされやすいのは「体制と実稼働」です。提案時に登場したシニアメンバーが、契約後は月1回のレビューにしか出てこない構成は珍しくありません。提案書の構成指定に「稼働する各メンバーの氏名・役割・月間想定稼働時間」を必須項目として入れておくと、この点を比較できるようになります。

プレゼンテーションの場を設けるなら、質疑の時間を提案説明より長く取ってください。説明資料の完成度は各社ほぼ揃うので、差が出るのは想定外の質問への応答です。「この仮説が3か月で否定されたら、次に何を試しますか」への答えが、その会社の実務の厚みを一番よく表します。

配布から選定までの進め方

配布から発注先の決定までは、社外の提案準備期間と社内の手続きを別々に積んで組みます。社外側だけで日程を引くと、稟議の直前で日数が足りなくなるからです。

実務上の目安として、提案を依頼する社数は3〜5社を上限に置きます。上限を超えると、評価する側の読み込みと面談の負荷が現実的でなくなり、結局は最初の印象で絞ることになります。それなら最初から絞ったほうが、1社あたりに割ける検討時間が増えます。同じく、RFP配布から提案提出までは3週間を確保したいところです。支援会社が発注側の事業や業界を調べ、独自の仮説を立てて提案に織り込むには、この程度の時間がかかります。短い期間で出てくる提案は、たいてい過去案件の再編集です。

工程の順序と依存関係は次のようになります。

  1. 候補の選定とNDA締結。声をかける社数を決め、必要なら先にNDAを結ぶ。
  2. RFP配布とオリエンテーション。短時間でも説明の場を設ける。文書だけでは伝わらない社内の温度感は、この場でしか渡せない。
  3. 質問受付期間。受け付けた質問と回答は、全候補社に同じ内容を共有する。個別対応にすると条件が揃わなくなる。
  4. 提案書の提出(3週間を確保する)。
  5. プレゼンテーションと質疑。
  6. 評価と選定、社内稟議。

社内側で先に潰しておく手続きが3つあります。第一に、候補社が自社の取引先登録と与信を通るかを、RFP配布前に購買部門と確認してください。登録要件で候補が落ちると、選定が終わっているのに発注できません。第二に、購買規定の相見積社数要件を、配布社数を決める前に確認します。規定が3社なら、候補が2社しかない段階で単独発注の理由書が必要になります。第三に、年度予算で執行する場合は、発注書の発行日から逆算します。社内の稟議・契約締結・発注書発行にかかる期間を、社外側のスケジュールに上乗せして押さえておきます。

質問受付は、支援会社の実力を測る場としても使えます。的確な質問が来る会社は、RFPを読み込んで発注側の状況を具体的に想像しています。RFPに書いてある内容をそのまま聞いてくる質問が並ぶなら、読み込みが浅いか、担当者の稼働が確保されていない可能性があります。

不採用の連絡は、理由を一言添えて必ず出しましょう。新規事業の支援会社は数が限られていて、同じ相手と数年後に別のテーマで組む場面が出てきます。選定プロセスでの振る舞いは、次に声をかけたときの反応に返ってくるのです。

よくある質問

Q. RFIとRFPは両方作る必要がありますか?

新規事業支援の発注では、多くの場合RFPだけで足ります。RFIが有効なのは、候補が多数あって母集団の絞り込みから始める場合や、支援サービスの類型そのものを社内で把握できていない場合です。候補が3〜5社に絞れているなら、RFIの工程は省略して構いません。

Q. 予算枠をRFPに書くと、上限いっぱいで提案されませんか?

その傾向はありますが、書かないことで生じる損失のほうが大きくなります。金額が不明だと支援会社は自社の標準パッケージで提案するため、提案金額が桁単位で散らばって比較できません。上限額ではなく「想定レンジ+内容により応相談」の形にし、「レンジを超える提案も、超過分の根拠が明確であれば受け付ける」と添える方法があります。範囲を絞りながら、より良い設計の提案を排除しない書き方です。

Q. 支援会社が1社しか候補にない場合もRFPは必要ですか?

比較のためのRFPは不要ですが、11項目のうち「現在地」「判断したい論点」「支援範囲と社内に残す範囲」「発注側の稼働」の4つは、1〜2枚にまとめて渡す価値があります。この4点が文書で共有されているかどうかで、提案の具体性と、着手後の認識ずれの量が変わります。稟議で相見積が求められる場合は、単独発注の理由(過去の実績、対象領域の専門性など)を別途文書化しておいてください。

まとめ

新規事業支援のRFPは、作業ではなく判断を発注する文書として書きます。要点は次の5つです。

  1. 仕様の代わりに、支援期間の終了時に下したい意思決定と、答えを出したい問いを固定する
  2. 現在地と予算レンジと発注側の稼働を開示する。隠すほど提案の精度は落ちる
  3. 成果物は「報告書一式」ではなく、誰がどの会議で何を決めるために使うかまで定義する
  4. 契約形態の希望と法務条件の論点はRFPに1行ずつ置き、条項の詳細は選定後の交渉と自社法務に送る
  5. 評価軸と配点は配布前に確定してRFP本文に記載する。金額の比重は下げる

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